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For the end of the world and the last man

N4BEK0『ドイツ滞在記』:新規執筆者と新連載のご報告

いわゆる「ホワイト労働」、生産性、福祉、合理性、そしてデモクラシー、戦後賠償、極右、極左、再軍備、かつての思想家たち――カント、ニーチェ、フィヒテ、ハイデッガー、ヘーゲル、マルクス、ハーバーマス、ルーマン。日本に欠けているものを語るとき、ドイツという国はしばしば「参照先」として持ち出される。

だが、それは果たして本当に「ドイツ」なのか。あいつではないのか。こいつではないのか。語られるドイツと、実際に生きられるドイツ、それも異邦人として――とのあいだに、どれほどの距離があるのか。

本シリーズは、ドイツに暮らし働く一人の日本人労働者によるエッセイである。彼女は、肯定的にせよ否定的にせよ理想として語られる「ドイツ」を、肌で感じた違和や気づきの中で解体し、現実の手触りとともに彼女にとっての「ドイツ」として再構築していく。

彼女が「ドイツ化」していくプロセス、あるいは「ドイツ化」できずに立ち尽くすプロセスは、単なる滞在記としても、ビルドゥングスロマンとしても読み応えがある。

だがそれ以上に、このテキストには、「社会を記述するとはどういうことか」を問い返す示唆が宿っている。「ドイツ」を記述することとはどういうことか。翻って、「日本」を記述するとはどういうことか。

国と国とを比較するという粗野な操作を越えて、個人の経験が照らし出すのは、私たちが日本であれ、ドイツであれ、その他の国であれ、あるいは「国」という社会の記述の単位を設定することの是非であれ、何も理解できていないが、しかしそれらに対する何某かの観念を持って生きねばならないということである。

連載は不定期のものになると思われる。私もなるべく新規の文章を催促するが、ともかくは今あるものを、是非、読んで欲しい。

2025年4月13日

OnTheBeach管理人・円原一夫

202503021711:【連載】N4BEK0『ドイツ滞在記』

Authored by N4BEK0 ドイツに来てから初めてウクライナ人と出会い、彼らの自国批判を聞いて、ウクライナは汚職のひどい国だという印象を持った。その腐敗具合が想像以上で、笑いのネタにしていたこともあった。その後 […]