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For the end of the world and the last man

タグ: ウクライナ

  • 202503021711:【連載】N4BEK0『ドイツ滞在記』

    202503021711:【連載】N4BEK0『ドイツ滞在記』

    Authored by N4BEK0

    ドイツに来てから初めてウクライナ人と出会い、彼らの自国批判を聞いて、ウクライナは汚職のひどい国だという印象を持った。その腐敗具合が想像以上で、笑いのネタにしていたこともあった。その後、ロシアの侵略戦争が始まり、難民支援を通じて多くのウクライナ人と接する機会があった。元夫の家に難民として住んでいた女の子とは今もやり取りを続けており、彼女はウクライナに戻った後も、現地のリアルを教えてくれる。

    民間人は常に危険に晒され、定期的な攻撃で多くの死者が出ている。インフラもボロボロで、停電は当たり前だという。それでも彼女はウクライナを離れたくない。同じように、たとえ戦争が続いても自国に留まりたいと考える人は多い。そんな状況を聞くと、いたたまれない気持ちになる。理不尽に民間人が死んでいく。

    しかし、現実は厳しい。ウクライナはアメリカの支援なしでは戦争を続けられない。西側諸国は資金や武器を提供しているが、NATO加盟を認めず、実質的な軍事介入は避けている。ウクライナやモルドバなどの旧ソ連諸国は経済的に貧しく、もともと民族対立が絶えなかった。さらに、ロシアの侵略戦争によって、周辺国から反ロシアのアナキストや武装勢力が流入し、ウクライナ国内には多様な政治思想が混在している。皮肉なことに、こうした勢力が共存できているのは「共通の敵」であるロシアとの戦争があるからだ。

    だが、もしこの戦争が終わったらどうなるのか。外敵を失えば、国内の対立が激化し、シリアのような内戦状態に陥る可能性もある。西側諸国がウクライナを全面的に支援し続ける保証はなく、期待するべきではない。今はトランプとゼレンスキーの会談が決裂して、いたたまれなくなった西側諸国の政治家たちがゼレンスキー支持を表明してるけど、それと具体的な軍事支援は別だ。

    そう考えると、ウクライナの一般市民のためには、今の段階で停戦し、ロシアに一定の譲歩をすることが現実的な選択肢なのかもしれない。これは、もともと汚職や民族・政治的対立が激しかった国が辿る、悲しい運命なのだろう。仮にロシアがウクライナを支配しても、民族主義勢力の抵抗やポーランド・バルト三国の反発によって、しばらくは混乱が続くかもしれない。

    それでも、ウクライナがアメリカの支援なしに今のような戦争を続けることは不可能だ。そもそも、永遠に戦争を続けることなどできないのだから。

    2025年3月21日


    執筆者:N4BEK0

    在独日本人労働者。